私にとって、このキャンプは初の参加であり、また初の東南アジアの旅となりました。この旅を通して私自身が感じていることは、物事のとらえ方や周囲の見方が変わったこと、さらには積極的に取り組むことやチャレンジしてみたいという意思が強くなったということです。
まず私は、このキャンプがとても「自由」な形であることを感じました。何かの合宿やツアーのように、集団で行動を共にする場合には一日一日の予定というものが時間や行動、すべてが事細やかに決められています。しかし、このSing Out Asiaのキャンプにおいては大まかなプランだけはあり、あとはそのときの状況に応じて皆で意見を出し合いながら調整をしていく形でした。30人という人数で決め事をするということは、そこでもコミュニケーションが必要とされますし、さらには国によって文化や言語、考え方の異なるもの同士であれば、もっと難しいはずです。私は今回、このような些細なことにおいても、今まで経験したことのない新鮮みを感じました。
この旅の中で、最も印象に残っている時間は二つあります。ひとつはクロスカルチャートレーニングの時間、もうひとつは食事の時間です。
まず、一つ目のクロスカルチャーの中で得たものとは、言葉がなくてもコミュニケーションはできるということ、またそれぞれの性格や特徴がだんだんと見えてくることです。
私の中で、コミュニケーションと聞くとまず思い浮かぶのは「言語」という言葉でした。「語学力」、「英語力」などといったことは、たしかに今の世の中では社会において必要とされている時代です。けれども、それはコミュニケーションのうちの一つにすぎず、言葉がなければコミュニケーションはできないというわけではありません。コミュニケーションとは、気持ちや意見を相手に伝えること、通じ合うことであり、それは語源のラテン語で「分かち合う」という意味からも理解できます。このクロスカルチャートレーニングは、コミュニケーションということの根本的な意味を見直すきっかけを与えてくれました。そして、このトレーニングは、名前や年齢、どこの国の人さえ互いに知らない状態でスタートします。それも言葉を使わずにお互いの事を知る手がかりを掴もうとするので、言葉を使うときよりも『伝えよう』とする気持ちが増し、また相手の伝えようとしていることを『くみ取ろう』とするので、自分が相手に集中し、また注意深くなっていることを感じました。その後、いくつかのグループに分かれてゲームをする時間では、そのグループの中でリーダー的にその場を仕切る人、意見は言うが断言はしない人、皆の話にうなずいて特に考えは述べない人など、一対一で会話はせずともだいたいのその人の性格、そのひとはどのような人であるか、などが少しずつ分かっていきます。
クロスカルチャートレーニングは私たちに周りを良く見ること、良く思考すること、互いに理解をし合い、また互いの意見を尊重し合うことの大切さを教えてくれました。
そして、もう一つの食事での時間について。朝、昼、晩と、皆で囲んだ食事の時間というのは、合計するととても長い時間になるはずです。その日、そのときによって食事をともにするメンバーは違ったため、それまであまり会話をしていなかった人と関わりを持つことのできる、ひとつの「きっかけ」となった時間でもありました。様々な料理がテーブルいっぱいに並べられ、それらのお皿に腕をのばしてつつき合いながら、互いの国の食事や文化について多く話しをしました。『これはあなたの国では何と言うの?』、『この食材は私たちの国ではこんな風には食べないよ。』、そんなような会話を絶え間なく笑い合いながらした時間は、とても貴重なものだったと今は思います。また、その他のもバスでの移動中の時間、ルームメイトとの時間、タレントショー、マーケットの見物、それぞれ過ごした時間は今でも明確に思い出されます。
このSing Out Asiaでの旅は、多くの仲間、それまで知らなかった異国の文化、また今の自分に足りないことなど、本当にたくさんのものを得ることができました。この旅は、自分を見直し、自分を変えていくきっかけを与えてくれる、とても素敵な旅であると私は思います。